食いしん坊、北米でヴィーガンになる

北米で植物性食品を食べて強く生きる記録

アボカドをめぐる問題

環境問題を考慮してヴィーガンになったと言うと、「そんなに問題ばかりに目を向けなくても良いのでは?」と言われることがたまにあります。

 

 

ネガティブなつもりはないのですけれど、食料問題や環境問題、動物の問題など、知ってしまったらそこに関与したくない、その上、動物性食品なしでもこんなに楽しめるんだったらそれで良い、、と思ってしまうのです。

 

 

とはいえ、次から次へと食べ物に関わる問題が浮上してくると、自分が知らないだけで、世界中には様々な問題があるというのはわかっているのですが、新たに何かに気がつくたびに、気持ちが重ーくなったりすることは確かにあります。

 

 

「うるさいな!ただ美味しいものを食べたいだけなのに!」と癇癪起こして自分の欲望だけを追求したくなる、、と言うのは自然な心理かな、とも思います。

 

でもやっぱり書いてしまいます。

人気のアボカドをめぐる問題。

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アボカド

 

 

ヴィーガンに大人気のアボカドの暗い側面

www.theguardian.com

 

世界の消費量の約40%がメキシコ産だと言うアボカド。

メキシコでは、アボカドの生産量を上げるために森林伐採や農薬散布が横行してきました。

散布された農薬が空気や地下水などをへて周辺住民に及ぼす悪影響は、喘息など呼吸器系疾患や肝臓や腎臓などの内臓疾患など、深刻です。

 

森林伐採がなぜ問題なのかは言うまでもないですが、農薬散布による周辺住民の健康への害や、ギャング(麻薬カルテル、Caballeros Templarios)が絡んでいるなどと言う側面は先日ご紹介したフィリピンのバナナ生産の問題と大変似た構造だと思います。

 

 

これらの記事を読むと、「ああ、アボカドよ、お前もか」と思ってしまいます。

いや罪はアボカドじゃなくて、資本主義を極限まで突き詰めて利益をあげることに走る人間にあるんですけれども。

そしてそう言う強欲な人間の活動の被害を被るのはいつも、社会の周辺というか底辺に押しやられて選択肢のない農民や労働者たちです。

 

そして、被害者と加害者の二極の間に知らない間に入ってしまっていて、どちらかというと加害者の行動に取り込まれてしまっているのが私たち消費者です。

 

 

アボカドは美味しいですし、健康的に良質の脂質をとるにはうってつけですし、ヴェジやヴィーガンのみならず、スムージーなどにして毎日摂取してるわよ、と言う方もかなり増えているのではないでしょうか。

 

私もアボカド大好きなんです。

でも家に常備してはいません。

それどころか一年にいくつ買うかどうか、なんです。

本当はもっと頻繁に食べたいんですけれど。

 

なぜか、それはこの果物の成熟するタイミングと、食べたいと思うタイミングがずれてしまうせいなのです。

食べたいな、と思って買ってきてもまだ硬かったり、そろそろいい感じだな、と思ってもその日は別のものを作る予定だったり翌日も外食の予定が入っていたり。

 

傷ませるのも勿体無いし、硬いのを無理やり使っても美味しくないし、私にはコントロールできないわ、と匙を投げてしまったというのが正直な理由。

 

なので外食するときにグアカモレがあったり、友人の作るディナーやスナックに入っていれば大喜びで食べてしまいます。

決して自分は買わないから加害者じゃないわ、と言っているわけではないですよ。

 

 

対策は

オーガニックや地域に薬品の害を与えないように栽培されているというシールがついたアボカドのみを購入するようにするのが一番だとは思います。

 

ただ、 栽培に際して大量に使用される水、この問題そのものはどこでどんなに倫理的に生産されたアボカドであっても避けられません。

 

ヴィーガンやヴェジが好んで口にするもう一つの栄養豊かですばらしい食品、アーモンドも大量な水分を必要とする植物なのですが、アボカドも実はアーモンドに並ぶthursty plants(喉が渇いていて水を多く必要とする植物)なのですって。

 

このグラフにはアーモンドは載っていませんけれども、アボカド1パウンド(約450グラム)収穫するのに使用される灌漑水(雨水は含まれない)は74ガロン余り。

1ガロンって4リッターですから、296リッター以上が必要とされます。

なんて数字を聞いてもピンときませんが、たとえばトマト( 10.8 リッター)やレタス(5.5リッター)などと比較すればわかりやすいでしょう。

 

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1パウンドの農作物を収穫するのに必要とされる灌漑水(ガロン単位)

 

カリフォルニア(基本的に砂漠)で作られる農作物でオーガニックのものは、農薬による環境への害を気にする人々が選択する食品として人気ですけれど、砂漠に水を持ってきて大量に生産する農作物、オーガニックであれなんであれ、地球環境に本当に良いとは思えないんですよね。

アーモンド、アボカド、米、これらをカリフォルニアで作るって、本来は狂気沙汰だと思います。

 

上の二つ目のリンク、Guardianの記事にもありますが、メキシコ産のものがよくないというならば、じゃあよそで作られているものを買おう、という発想は必ずしも長期的にみて有益な対応策ではありません。

 

南米諸国で作られているアボカドにしても、農業生産の実態をきちんと把握していない以上は何が行われているのか、メキシコよりもましなのか、判断がつきません。

 

 
食べたいものを食べたい時に食べることができるのは基本的人権ではない

 

綺麗な空気を吸って本来あるべき健康な体を維持できる環境は世界中の人々に保証されるべきだと思います。

 

カナダの水道代が無料なのは基本的に、人は水にアクセスする権利があるべきだから。

(モントリオール市の場合、水道代は無料ですけれど、水道インフラ維持のためにほんの少額の水税というのが年に一度請求されます。)

 

でも、カナダや日本のような、本来その作物が収穫できない場所にいながらアボカドを食べるのはそういうレベルで保証されるべき権利ではないと私は思います。

 

値段が高いと不満に感じますし、新鮮なものが揃っていないと不自由に思います。

いつでも気が向いたときに店に行ってお金を出して手に入れられないのは不便だと感じてしまいます。

 

それって、やっぱり消費社会に慣れてしまったからですよね。

 

 

カナダにいると、地元産の農産物のみでは生きていけない(芋ばっかりで暮らすか)と切実に感じるので、輸入を一切断ち切れ、とはとても言えませんが、世界中の人口(の40%ですが)を満足させるような量の農産物を一箇所で生産するというのは、環境への負担が大きすぎますし、無理です。

 

エキゾチックな食品が出回れば試してみたいし、気に入れば食べ続けたいですけれど、そうすることの対価を深く検証してみる必要があるように感じます。

 

 

 何にも考えずに好きなものだけ食べていられたら楽しいですけどね。 


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