北米では、ニクソン大統領の頃から、食料品は基本的に、家計を苦しめないよう、安くて手に入れやすいものであるべき、という考え方に基づいて、価格が抑えられています。
抑えられていますと言っても資本主義国家ですから、産業に政府から援助金が出ているために、価格に経費が反映されないために低価格で市場に出回っている(だから生産者は儲かるので文句なし)という構図ですが。
私が住むカナダはアメリカではありませんから、ニクソン大統領の選挙公約なんか関係ないのですが、まあ同じような文化圏、経済圏にありますので、食料品には基本的に消費税はかからず、大多数が食べる食品だけを食べていれば、食費はある程度安く抑えられるような仕組みです。
大多数が食べる食品とは何かといえば、まずホワイトブレッド、精製されて漂白された小麦粉を使った白くてフニャっとした食パンです。健康に少しでも関心のある人たちは、全粒粉とか雑穀入りのパンとかを選びますが、そういったことを知らないもしくは無関心な人たちは今でも真っ白なパンを食べます。
比較的安い値段及び、昔からの馴染みがあるせいか、貧困層や高齢層がこういった食品を選ぶ傾向にあります。
他にも、加工食品で、ミルクを加えて加熱するだけで食べられる、クラフト・ディナーとか、缶詰のスパゲティーとか(麺だけじゃなくて、ソースもすでにあえてあります、どんなものか想像できますか?)味や栄養を考えず、ただただ安くて手軽で、ジャンクなものが北米にもありますが、そういったものはやはり貧困層に人気です。
日本でもそういう構図は若干はあるかと思います。例えば、無農薬野菜や健康にいいと言われている食品はそうでないものよりも若干値段が張るから、学生の身分ではなかなか日常的には買えない、という。でも、その「若干高い」「あんまり健康に良くないけど値段はお得」の差が、北米ではかなり幅広く、安くて手に入れやすい食品の粗悪っぷりが、あまりにひどいのですよ。
そして最悪なことに、社会の底辺に生きる貧困層の人々は、健康に悪いと言われる食品が大好きなのです。そして、そんなお金のない彼ら(プラス一時的にお金のない学生も)を対象とするファーストフード業界が提供する、粗悪な油を使ったポテトフライ(こちらでは、フレンチフライと言います)コーンシロップとキャラメル色素とカフェインが入っているだけで、飲む意味があるのかわかりゃしないペプシやこーくも、ものすごく安いです。こういう食品の中毒になっちゃっている貧困層があまりにも多い。
私は仕事上、そういった貧困層の人々と関わりがあります。
週に二日だけですが、そういった人たちと一緒に、彼らが食べたいと思うようなランチを一緒に調理し、彼らが自宅でも自分で調理できるようになるための訓練をしています。
調理する人たちも、食べる人たちも、基本的に貧困層の、「肉大好き、ステーキはなかなか食べられないけど、粗悪なハンバーガーなら月に一度か二度食べる」人々で、多くは糖尿病や高血圧、高コレステロールなどと言った疾患がある人々です。
彼らが、食べたいと思うものの中で、なるべく健康によくて、しかも材料が安価なもの、という基準でメニューを考えるのは、なかなか難しいものがあります。
でも、彼らに、健康的な食品なのに美味しいじゃん!と思うものを発見してもらって、次からは健康にいい方を選んでもらえるように、また、お金がないけど何か美味しいものを食べたい、と思った時に、単価が安いだけで栄養価の低いものを選ばず、栄養もあって美味しいものを選んでもらえるように、と工夫をしています。
大まかに言って彼らが好むのは、肉や、脂っこい(揚げ物とか)もの、しょっぱいもの、甘いもの(炭水化物たっぷり)そして、彼らの慣れ親しんだ(北米および西洋の伝統的な食事)ものが多いのです。
食べるという行為は、本当に個人的で、感情的で、主観的な行為だと思います。
マッシュポテト一つとっても、うんちくを語る人がたくさんいるんです。
たかがジャガイモを潰してバターとミルクと混ぜただけなものじゃん、と思いますが、いろいろとこだわりがあるようで。
ヴィーガンになった私、職場では、自分が食事の支度をする曜日がたまたま月曜と金曜だったので、月曜を「ミートフリーマンデー」にしてみよう、と提案して肉抜きでやっております。金曜はそういう取り決めをしていないので、肉が食べたいというリクエストがあれば肉も取り入れます。でも密かに肉より野菜を多く使ったメニューにして。笑
ここのとこ、肉抜きでも割と文句も出ず、割と上手にごまかせている感じです。
肉は使いませんが、バターやミルクや卵は使っていますので、ヴィーガンではありませんが、肉大好きな人々にいきなりヴィーガンではショックも大きいので、まずはミルクやバター、チーズたっぷりのベジタリアンから攻めていきます。
でも今日は、豆腐たっぷり、バターちょっぴりの一皿がとっても好評だったので、密かにガッツポーズをした月曜日でありました。