近所のヒンドゥー寺院へ
ヴィーガン和食の翌日の日曜日、知人に連れられて、ヒンドゥー寺院に行ってきました。
宗教心と言うよりは、文化人類学的好奇心と、お寺の行事の後で振舞われる食事につられて。
お寺の行事の詳細は、言葉がわからずにその場にいてじーっと見つめていただけなので、ほぼ理解不能。お坊さん(というのか)のお話や歌が終わった後で、祭壇にみんなと一緒に歩いて行き、聖水のようなものを振りかけられたり、お皿に乗っかったロウソクを皿ごと受け取ってくるくると回したり、いろいろなアクションがありまして、知人に「これはどういう意味のある動作なの?」と色々質問攻め。
そして、お腹が減った頃に食堂へ。
今日の食事は、ジャガイモとキャベツのサブジ、ダール、甘いご飯(デザート的な感じでしょうかね)と、もっとちゃんと甘いデザート、バスマティライスとナン、マサラチャイ。
このダールが、ものすごーーーーーく美味しかったんですよ。
ダールというのは、レンティルやスプリット・ピーを煮込んで作った、インドの煮豆。水分を多く入れて作ればダール・スープになります。
正直、レストランでタリー(コンビネーション・プレートというか、定食)にダールが入ってると「ちっ」と思っちゃっていたんです。なぜなら、大概のダールは、レンティルのもさっとした炭水化物的な味と舌ざわりが圧倒的で、味付けが割と手抜き?な感じだから。
でも、昨日のダールは、お代わりをお願いしたほど美味しかった。
食事中は「もっと食べる?」と聞きながら鍋や大きなボウルを持った人たちが練り歩いてくるので、欲しい人は席を離れることなくお代わりをいただけるという、危険なシステム。
明らかにヒンドゥ教徒でもなんでもないのに紛れ込んでいる私のような存在でも目立つことなくお代わりをいただけるのです。
このお食事、食べる人たちがその場でお金を払うのではなく、信者の皆さんが交代で結構な金額を食事の材料代として寄付されているようです。材料の食材を直接寄付する方もあるとか。
経済的に苦しい人も豊かな人も一緒に食事できる優しいシステムですね。
調理する人たちも皆さんボランティアだとか。
下手なレストランよりも美味しいですからね、このボランティアの人たちの家の食事ってどんなに美味しいんだろう、と想像してしまいます。
そして、あんまりにも美味しかったので、食べ終わってから厨房にのこのこ乗り込んで聞いてきました。
厨房にいたおじさんに「これ、あなたが作ったんですか?」と声をかけたらまず、「レシピはない!」と怖い顔でぶっきらぼうに。
「ないんですか、じゃ、何を入れたのかだけ教えて!」
と言っても、おじさん無視。
構わず「今まで食べた中で一番美味しいダールだから、何が入ってるのか知りたくて。生姜が入ってるでしょ、クミンでしょ、ターメリックでしょ、あと、レンティルも2種類以上入ってるでしょう、なんて種類なのかなあ。」
するとおじさん、「レンティルは色々入っとる。スパイスはジンジャー、クミンシード、ターメリック、グリーンチリペッパー。でも君には作れない。調理にはガスが必要だ。」
君には作れない、って断定的ですが、おじさんが指差した厨房の商業用のガス調理台は、それはもうパワフルそうなものですから、確かに家庭用とはレベルが違いますね。
北米、特にうちの町は調理台のエネルギー源が電力に切り替わって数十年なので、ガスで調理している家庭って本当に少数派です。
うちも電気なのです。ガスがいいと思いますが、うちの通りにはガスの供給はないので、ガス調理台を買うならプロパンガスの会社と契約しなければいけません。なので未だに電力です。残念。
「ああー、ガスですか、そうですよね、ガスいいですよね〜。うちには卓上コンロならありますけど、ダメ?」
「圧力鍋がないとダメだ」(卓上コンロでは不足だとは言ってませんねえ。)
「おお、圧力鍋ですか(持ってる)そうですか、なるほど〜。」
おじさん、結構怖い顔しながらも口を割り始めたうえ、大きな鍋に残っていたダールを「持っていくか」と言って(私が返事する前に)タッパになみなみ入れてくれましたよ。
そこに知り合いがやって来て「サブジもあげてよ!」と言ってくれたので、サブジとダールをたっぷりと頂きました。
役得。
この後、厨房での私とおじさんのやり取りを聞いていた別のおじさんが追っかけてきて、もっと詳しくつくり方を教えてくれましたが、そのおじさんはこのダールの調理人ではないので、まあ一般的な調理法、ということでしょう。
そしてこのおじさん、私が日本人と知ると「日本人なのに、インドの食べ物を好きでいてくれるなんて、素晴らしい」と。
知人もそうなんですよね、「この子インド料理が好きなのよ〜、いろいろ勉強して知ってるのよ〜」ってお寺で会う知り合いに自慢するんです。
私が勉強して(レシピ本読んで)知ってることなんて誰でも知ってるようなことですけどね。
インド料理が世界中でどれだけ人気があるのか、本人たちはあんまり知らないのでしょうか?レストラン経営する人たちは知ってるでしょうけどね。
ダールの作り方(大雑把な解説)
私は普段はトリニダド式でスプリットピーを使うダールのレシピを愛用しているのですが、作り方はほぼ同じ。
ダール(調理前も調理後もこう呼ぶようですね)と水を1:1,5 の比率で火にかけます。(調理人のおじさん曰く、圧力鍋で、ガスコンロでなきゃダメだ!)
最初に入れるのはターメリックと塩。
ダールは調理されるにつれ、膨らんで水面から頭を出してきますから、その都度水を少しずつ足して、常にダールが水の中で調理されるように。(圧力鍋で調理してるのにいつその水加減を調整するのかは謎です。二人目のおじさんに聞いてもはっきりとした返事がなく、同じプロセスを繰り返し説明されたのみでしたので。)
ダールがちょうどいい具合に柔らかくなってきたら、別の鍋かフライパンを加熱して、ギーを入れ、ヒングもしくはニンニクの刻んだのを入れ、香りが出たらクミンシードを一粒入れて、シュワシュワシュワー、といったら使う分量全てを入れて、全体にシュワシュワーっとなるまで加熱(せいぜい1分。焦がさないように。)して、ダールの鍋にじゃっと加える。
ダール(水分)にクミンシード(油たっぷり)を加えると、水と熱い油を合わせた時の反応が出ますので、火傷しないよう、鍋蓋などで跳ね返りを避けるように工夫して。
好みでアレンジ
お寺の食堂でいただいたダールには、玉ねぎも入ってました。完熟トマトを刻んで入れても美味しいし、好きな具を入れるといいと思います。
おじさん曰くダールの加熱に圧力鍋を使う、ということですが、なくてもちゃんと火は通ります。スプリットピーよりもレンティルのほうが火が通るのは早いですし、スプリットピーだって他の乾燥豆に比べれば調理時間はとても短いのです。
水に浸しておく必要もありません。
圧力鍋の利点は早く火が通るということくらいだと思うので、なぜ圧力鍋でないといけないのか、私個人的には疑問です。でもまあ、いろんなやり方を試してみるといいのかも。
ガスで調理という点についても、ダールを茹でて、鍋がグラグラっとしたら、今度は火を絞って気長に調理しますから、ガスの強力な火力は特に必要でもないような気がします。電気の調理台は、火力を絞っても余熱が結構長く続くし、一番弱火に設定しても結構絞りきれない場合があるので、そういう点でガスのほうがいい、ということなのかもしれません。
ダールを作り始めたら、ギーでクミンシードを炒めるまでの間はあまりやることもありませんから、 この時間にナンを仕込んで、おくとより一層インドな雰囲気で食事が楽しめますね。
ダールは食物繊維とタンパク質が豊富な上、北米では乾燥したものがとても安く手に入りますので、貧しいものの味方なメニューです。
缶詰も売られていますが、こんなにすぐに火が通る(水につけて一晩置くなどの手間いらず)ものですから、ぜひ安い乾燥レンティルもしくはスプリット・ピーを使ってお試しあれ。
追記:
こんな記事見つけました。