好きだけど好きになってはいけない、罪なやつ
職場でメニューを組む時も、友人たちとの食事でも、揚げ物に対する人々の反応が面白い。
先日の「日本食を作って食べよう」会では、コロッケが好評でしたが、一緒に調理した友人たちにコロッケの説明をしていて「揚げ物」と言った時点で眉をしかめた人数名。
「でも今回は揚げずにオーブンで焼く」と言ったら「ああ、なら良いね」と表情が緩む。
揚げずにオーブンで焼くことにした主な理由は、人がたくさん行き来する台所で揚げ物しながら調理の説明をするのは無理があるし、オーブンに入れてしまえば時間が来るまで放置できるから楽、ということだったのですが。
油を多く使った料理は、どうしてもカロリーが高いし、食べ過ぎると胸焼けするし、古い油を使い回ししたようなファーストフードの揚げ物なんかは食べ過ぎなくても胸焼けする。
コレステロールが気になる人、体重を落としたい人、他にもいろんな健康上の理由から、油には気をつけているという人は多い。
そういう意味では多分、日本でも北米でも揚げ物の位置付けは共通しているように思います。
北米における揚げ物観
あと、北米では「ディープフライはよくない」のに対して「スティアフライはヘルシー」と言われています。
スティアフライとは、いわゆる炒め物。
炒め物だって油を入れ過ぎればギトギトで脂っこくて体に良くないですが、まあディープフライ(いわゆる揚げ物)よりはマシという判断をされているということです。
健康に良いとか、ヘルシーとか、そういう言葉って濫用されているうちに意味を失っている面もありますから、あんまりそういうもん切り型の判断をするべきじゃないと思いますが、「あれはダメ、これはいい」という単純な区別がつく方が楽だから、そういうことになっているような、そんな気もします。
まあ、北米の外食産業で出される揚げ物って、衣に油がたっぷり吸収されていたりして、揚げ物のレベルが低いということもあるかと思います。
調理用油がスモークポイントに達したら発がん性が増えるから、油を熱すること自体が良くないという考え方もあります。
高温にも耐える油とスモークポイントが低めのオリーブオイルのような油と、油の原料によって性質が違いますけれど、全体的に油の温度を高くしてからっと揚げる、という考え方自体あまり浸透していないと思いますし、炒め物の前に鉄のフライパンをきっちりと熱するという行為を見て、危険だ、と言われたこともあります。
すべての揚げ物は平等ではない
日本には天ぷらとか、コロッケ、他にも美味しくて人気の揚げ物がいろいろあります。
揚げ方が下手だと自称する人、あんまりいい油を使ってない店のお惣菜のコロッケなど、もちろんありますけれど、上手にあげたらカラッとして美味しい、という見方が一般的ではないかと思います。
ケンタッ*ー・フ*イド・*キンが日本では人気なのも、揚げ物に対する差別意識(?)が低いせいというのもあると思います。
もちろん「揚げ物ばっかり食べてちゃいけないよ」と世のお母さんたちは子供に野菜を勧めたりしますけれど。
個人的には、上手に揚げた揚げ物は脂っこくないし、ほどほどに楽しんでいただいて、他のものとバランスよく摂ればいいと感じます。
ただ、家庭で料理する場合、揚げ物は台所が汚れるからそんなにしょっちゅうはやりたくない。
揚げ物をする頻度が落ちると、腕も落ちるというか、あれれ、私こんなに揚げ物下手だったっけ、と思うようになり。
そのうち面倒くさくてどんどん頻度が落ち、ますます腕も落ち、という悪循環にはまっている現状。
ヘルシー勧善懲悪劇場
揚げ物は、悪者ってわけじゃないんだよ、と大きな声で言いたいけれど。
栄養のことや食品のことを子供の頃から少しずつ教わって育ってきたわけではない人たちと接すると、「これはヘルシーなの?」と聞かれることがよくあり、ヘルシーであると判断された食品は、毎日食べてもいい、いくら食べてもいい、というような、とても安直な結論に至ってしまうようです。
「それ自体は悪くないんだけど、あんまり食べるとかくかくしかじかな弊害があって、、、」というと「やっぱりヘルシーじゃないんだね」と。
「いや、そういうわけじゃなくて、たまにちょっと食べる程度なら美味しいし心が満たされるし、幸せな気分になれるという利点が大きいわけで、、」
「ヘルシーならなぜたまにちょっとなの?体に悪いの?」
勧善懲悪がわかりやすくて大衆受けしやすい、というのと、食品も似ているとすれば、揚げ物は、映画の最後に殺されてしまう悪役でしょうか。
嗚呼、腕を上げて、サクッとカラッと美味しい天ぷらでも食べさせて、揚げ物差別をする友人知人の心をゆさぶることができたなら。
しかし、やはり家で揚げ物は、、(繰り返しに戻る)