写真は https://authoritynutrition.com/benefits-of-almond-milk/ より
ヴィーガン御用達ミルク
私たちヴィーガンはミルクが必要な時、牛の母乳ではなく植物性のミルクを使います。
大豆製品を避けたがる傾向の強い北米では、アーモンドミルク始め、いろんなナッツミルクやライスミルク、オートミルクなど、幅広く普及しています。
白い液体ならなんでもミルクと呼んじゃってるわけですが、それぞれに味も栄養素も若干違うので、ミルクが好きな人はいろいろ試すと楽しいかも。
で、この植物性ミルクの中でも人気のアーモンドミルク、「環境によろしくない説」があちこちでささやかれていますね。
牛の母乳販促派の陰謀か!とも思いますけれど、世界中で消費されるアーモンドの8割が干ばつになりがちな州カリフォルニアで収穫されていることを考えると、それほど嘘八百でもないような気もするので、ちょっと調べてみました。
アーモンドミルクが環境によろしくないと言う話
英国のThe Guardian紙でも書かれていますね。
アーモンドミルクは体には良いけれど、地球にとっては良くないですよ、というタイトルです。
カリフォルニアのアーモンド農園は今でも拡大している。100ml生産するのに100リットルの水が必要な牛乳の方が環境には優しいというのではないが、牛乳の生産は地球上の一箇所に集中しているわけではないのに比べ、アーモンドの生産がカリフォルニアに集中しているのは環境のためには問題だろう、、、というような内容。
The Guardianも引用している、Mother Jonesの記事
アーモンドを食べる習慣が水源を搾り取ってカリフォルニアをカラカラにしてしまうぞ、というようなタイトルです。
アーモンドを一粒収穫するために必要な水は1,1ガロン(5リットル)だそう。
世界中のアーモンド消費量の8割をカリフォルニアが供給しています。
その収穫量を支えるほどの水は、カリフォルニアには降ってきませんから、アーモンド農園を拡大させるために農家(企業)は地中深く、帯水層までドリルして井戸を掘っているそうなのです。
San Joaquin Valley, the ground has literally been sinking by an average of 11 inches per year, a 2013 US Geological Survey study found.
このため、アーモンド農園が集中しているSan Joaquin Valleyでは地盤沈下が毎年平均約11インチ(=27センチちょっと。1フィートが12インチ)していたことが2013年の調査で発見されました。
カリフォルニアは元々水の滴る湿度の高い土地ではありませんし、今後20世紀以前のような降水量が戻ってくることは期待できないそう。
そうなると、井戸を掘って水を確保したいのはアーモンド農業だけではありません。アーモンド農業だけがこんなに無茶な水の使用を続けることはできないわけです。
カリフォルニアにはカナダの全人口にほぼ匹敵するくらいの人々が住んでいます。カナダが広々しているんだとも言えますけれど、大勢の人々がカリフォルニアに定住しているのです。
5年もの間干ばつに悩まされていたカリフォルニア州では、住民に対して水道水の使用量の制限もかなりあったと聞きます。
北カリフォルニアに住んでいる知人は、自宅のトイレは一人が使用するたびに流したりはしないんだと言っていました。
そんな規制のある状況で農業だけ水を好き放題使えるっていうのは、ちょっと異様ですよね。
儲かるんだから、農業に水を使用させない手はないだろう、という考え方なのかもしれませんけれど。
でも乾燥しているカリフォルニアで水をたっぷり使って初めて生産できるような農産物を育てるのって、やっぱり無理があると感じますよ。
アーモンドだけじゃない、水を多く必要とするカリフォルニアの農産物
カリフォルニアの農業は、灌漑システムの整備や井戸水の使用権など、他の産業よりも優遇されているからこそ成り立っているんだろうと思うのですが、どうでしょう。
砂漠のカリフォルニアに必要な水を補給するシステムには、歴史的に州や連邦政府の資金が膨大に注ぎ込まれて来ていますが、そうやって確保される水を、アーモンド、コメ、アルファルファなどなど、水をたっぷり必要とする農作物の生産に優先的に回すって、本来の意味でサステイナブルな選択なのかしら、とよその国に住んでいる身ながら不思議に思ってしまいますよ。
だって、要するにカリフォルニアの水を安い価格で世界中の消費者に向けて売っているわけですからね。
アーモンドも肉も、消費者の感覚としては「安い」ものではありませんが、灌漑システムの整備や井戸の掘りすぎのための地盤沈下の二次災害を収拾するための費用などが反映された価格ではありませんから、本当の意味のコストを反映していないという意味で、「安い」と思うのです。
そういったコストは消費者に跳ね返すのではなくて、州や連邦政府が補助してあげているのよ、というと一瞬聞こえはいいのですが、輸出が拡大して儲けて良い思いをしているのは大手の食糧生産企業。 農家、というとついつい昔ながらの個人農家のことだと思ってしまいますけれど、北米の農業は個人農家も大規模な農業企業の下請けみたいな形態になってしまっていますから、利益も企業が持って行ってしまっているのです。
アメリカは税金自体それほどではないですけれど(カナダ比)それでも納めた血税が大企業への補助金になり、みんなで大企業を儲けさせてやって、環境破壊をさせてやって、おまけに節水も住民ばかりに比重がかかるって、ちょっとひどいような気がします。
カリフォルニアからやってくる農産物、私は本当にありがたいと思っていますけれど、世界中がカリフォルニアの産物をこうやって消費している構図っていうのはやっぱり地球環境にとっては無理があるだろうと感じないではいられません。
酪農よりはマシ(なのだろうか)(だったらいいのだろうか)
一方、アーモンドミルク批判への反発ももちろんしっかりあります。
いくつか読みましたが、この記事を見てみましょう。
アーモンドが一粒あたり5リットルの水を必要とするのに比べ、アルファルファはアーモンドの倍近く必要としています。
アルファルファは人間が消費するのではなく、家畜の餌、要するに乳牛や食肉生産のために使われます。
酪農や肉食生産に使われる水の量は、餌になる農作物の生産からカウントするとものすごい量になりますので、アーモンドの比ではないだろうと。
上に引用した記事は若干ヴィーガン贔屓な視点で書かれているようで、「牛乳よりはマシなんだから、アーモンドミルクをじゃんじゃん飲みなさい」というような書き方が。
もうちょっと冷静に分析されているような、UCLAの学生が書いた論文を見つけましたので、こちらに貼っておきますね。
時間のある方はどうぞ。笑
要約だけ斜め読みしたら、水という点ではアーモンドミルクが、グリーンハウスガスという点では牛の母乳の方が問題が大きいだろうというような感じでしたね。
学術論文だからこれが正しいんだというわけではありませんが、まあ参考までに。
年々売り上げが落ち続けている酪農産業が植物性ミルクを迷惑がっているのはこのところいろんなメディアでも取り上げられています。
「牛の母乳以外をミルクと呼ぶのを禁止しろ!」なんていう要求も出て来たり。笑
アーモンドミルク叩きも、酪農産業のヴィーガン&ヴェジ食品への反撃かなあなんていう気もしないでもありません。
実際、ヴィーガン食が昨今急激に広まっていて(それは私たちにとっては嬉しいこと)「ヒップな若者が格好つけて飲んでる(食べてる)わけのわからないもの」というような受け止められ方もあり。
実際に良い物、習慣であっても、広まり方が急激だと新しいものに抵抗する人々が登場するのは世の常です。急激に広まっても、一過性の「流行り」で終わってしまっては仕方がないし。
アーモンドミルク叩きも、ある意味そう言ったヴィーガン(もしくはプラントベースド・ダイエット)という新しい風潮へのバックラッシュの一部という側面もあると思います。
だから「肉や牛乳よりはうんとマシなんだから、これでいいんだ」という反発の仕方をするヴィーガンもいるのでしょう。
でも本当に大事なのは牛乳かアーモンドか、ではなくて、地球環境も生産者も消費者も、食品に関わる全ての人々(環境は人じゃないですが)に無理がかからず、持続可能なやり方を見つけて現在の歪みを改善していくことですよね。
アーモンドミルクについて、長くなりましたが、続編に続きます。
大企業が世界中に売りさばいてるようなオーガニック・フードなんか本来の意味ではオーガニックじゃないですし。