材料費を抑えたレシピを求めて
私は料理人でもなんでもありませんが、職場では週に二回ランチを作るボランティアを指導しています。
職場のサービス利用者の9割以上がウェルフェア受給者なので、彼らの予算に合わせた値段でランチを提供しますので、材料費にも制限がかかります。
自分では肉も魚も一切買わなくなって久しいですから、最近肉が高いのよ〜、なんて言われても実感が全く湧かないのですが、ここ数年、肉の値段はかなり上がったらしくて、職場のランチからも肉が消えました。
モントリオール界隈で一般的に出回っている魚介類は質に対して値段が馬鹿高いと言う印象はありましたし、魚介類を好む人の絶対数も少ないので、職場のランチに登場する魚介類は缶入りのツナだけです。
と言うことで、肉好きで濃い味付けに馴染んでいる北米人諸氏に喜んでもらえ、しかも栄養もちゃんとバランスよく取れていて、朝の二時間ほどで全ての支度が終えられて、一食2ドル50セントで赤字にならないメニューを色々と考えなければいけません。
いつも同じものばかりでは皆飽きますから、常にアイデアを求めているのですが、そんな中見つけたのが、ジャック・モンロー(Jack Monroe)さん。
GuardianやBBCのサイトでレシピを書いていらっしゃったのが私の「低コスト、栄養たっぷり、レシピ」と言うキーワードに引っかかったのでした。
ジャックさんがお住まいなのは英国ですから、スーパーなどで手に入る食料品の内容も値段も、北米モントリオールとは若干違いますけれど、基本的には英国で安い豆類はモントリオールでも安価に手に入りますので、かなり参考になります。
しかもジャックさん、レシピにいちいち一食あたりの原料費を表示してくれてます。
例えば80pでできると表示されているものが、カナダドルに換算して同じコストで作れる訳ではないのですが、気持ちは伝わると言うか。笑
これをみていると、英国には缶入りの人参やジャガイモがあるのか!しかもフレッシュで買うより安いんだ!?などと若干の違いに驚きますけれども、詳細は自分の地元の事情に合わせて柔軟に対応すれば良いのです。
最近はGuardianでは書いていらっしゃらない様子ですが、 安価に簡単に作れるレシピを発表し続けていらして、最近ではウェルフェア受給者など貧困層の人々がフードバンクなどに行って受け取る食品を使って美味しく作るレシピを集めた本を出版なさいました。
ご本人も小さな男の子を育てるシングルペアレントで、今でこそ著名人ですけれど以前はウェルフェア受給者だったとかで、Anti Povertyアクティヴィストでもあります。
Anti Povertyアクティヴィストなんて英単語とカタカナ混ぜて表記してしまいましたが、日本語でこれをなんて言うのやらとググりましたら、「貧困対策活動家」と出てきまして、、、、実際に日本でこう言う活動家をやっていますよ、と言う人が存在するのか、そしてそう言う人たちが自分たちをそうよんでいるのか、ちょっと謎だなと感じたので中途半端な英語カタカナ混じりで失礼しました。笑
ジャックさんの活動や発言をみている限り、貧困対策と言うよりは、貧困を生み出す社会の構造や貧困と戦っている、と言う方が正しいような気がします。
最近出版された新刊、Tin Can Cookはまさに、フードバンクで未知の食材を与えられちゃったけどこれを使って何を作れって言うのよ、と困っている人々に「それを使ったらこんな美味しいものが作れるよ」とアイデアをくれます。
私は缶詰をなるべく脱したいと思っているので、この本を見て参考にするつもりはなかったのですが、職場で行うコミュニティ・キッチンのテーマとしても参考になりそうだし、英国で活動するジャックさんを支援すべく、一冊だけですが購入しました。
この本のイントロを読むと、ジャックさんの視点がいかに食のスノビズムの対極にあるかが伝わってきます。
鮮度がよくてオーガニックで、それだけで美味しいフレッシュな食材をいつでも買える状況にあれば、こんな本は不要ですけれど、世界中はおろか、豊かな先進国にだって貧困に喘ぐ人たちは住んでいて、食べると言う行為は貧富の差に関わらず生存するためには欠かせないもの。
空腹をしのぐと言うだけではなく、食べて満ち足りた気持ちになりたいと思うのにも貧富の差は関係ありません。
むしろ貧しい人たちにとって、食べると言う行為はあらゆるエンターテイメントにお金と時間をかけられる豊かな人々よりももっとずっと重要だと思います。
今週と来週、コミュニティ・キッチンでは「家にあるものだけで何が作れるか」をテーマにワークショップをやります。
お金がなくて買い物できないという状況だけでなく、モントリオールに住む私たちの場合、「買い物に行きたくても外がアイスストームでそれどころじゃない」「路面がツルツルに凍っていて危険だから外出したくない」と言う事情だって大いにあり得ます。
ジャックさんのレシピを参考にするかどうかは参加者と話し合って決めますが、どんなアイデアが飛び出すか、ちょっと楽しみ。
ポパイと法蓮草(余談)
子供の頃法蓮草が苦手だった私。
母はいつも「法蓮草食べたら強くなるよ〜、ポパイみたいになれるよ〜」となだめすかして食べさせようと努力してくれたのを覚えています。
ポパイみたいになれるよ〜、って3〜4歳くらいの女の子に言うのもなんだか不思議ですけれど、ジェンダー・ステレオタイプにはめようとしない母だったのか、あんまり気にしなかったのか。笑
当時、ポパイがピンチの時に食べる「法蓮草」は缶詰入りで、それを口に直接放り込む姿をテレビ画面で見ながら、あれが自分が苦手な緑色のほうれん草と同じものだとは認識しずらかったんですよね。
北米に来て実際に缶詰入りの法蓮草が売り場に並んでいるのを見て「あああ!実存する!」と感動しましたけれど、実際にあれを購入して食べてみたことは未だにありません。
ほら、欧米のまずい料理を作るお母さんの話でよく「法蓮草が灰色になるまでグツグツ茹でる人だった」なんて言うじゃないですか。
幼少期の私は緑色にシャキッと茹でられて胡麻和えや白和えになった法蓮草が苦手でしたけれど、大人になった今は灰色になった法蓮草を想像すると恐ろしい。
皆さんは缶詰の法蓮草を食べた経験、ありますか?