気候変動、変わりゆく地球環境
カナダ出身で現在はテキサスにあるTexas Tech Universityの大気科学者(Atmospheric scientist)で政治学教授、Katharine Hayhoe氏。
TEDやFreakeconomicsなどによく登場して環境問題の話などされるので、ご存知の方も多いと思います。
このTexas Observerの記事を読んで、やっぱりこの方すごいなあと思ったのでここでご紹介させていただこうかと。
気候変動問題の話題が出ると、「気候変動は人類の経済活動の過程で排出されるグリーンハウスガスのせいで加速している」「気候変動の原因は経済活動とは関係ない、全ては自然の営み」という二派に別れますね。
そして「気候変動人災説」を標榜する者はアメリカで言えば民主党支持者、エリート、学者、金回りの良い左派、であり、「気候変動懐疑派」は共和党支持者、企業家など富豪な右派、労働者や農民など保守派、という立場の人たち、というのが大まかな構図です。
Hayhoe氏のアプローチは、学者として知っている事柄を無知な一般人にこれでもか、と伝えようとするものではありません。
彼女自身、父親が牧師だった家庭で育ったキリスト教信者であることもあり、気候変動という概念を否定しがちな保守派キリスト教徒たちを理解し敬意を払うことができるというのも大きいですが、彼女のアプローチの基本に「前向きなコミュニケーションをとる」という考え方があるのが大きいように思えます。
記事中でHayhoe氏は、人々は科学的な観測結果を全く理解できないのではなくて、温暖化につながるグリーンハウスガスを減らすための対策が「私たちの生活を悪くさせる」ことに繋がるだろうとか、国内の経済が波状して中国が世界を牛耳るようになるだろうとか、「解決策」=「我々の暮らしを悪化さる」と信じ込まされているのが問題だと言っています。
先月のアメリカの大統領選挙などで見せつけられたのは、政治家が人々に恐怖感を植え付けることで票を得ようとするということ。
でもこれは政治家に限らず、環境保護運動でも、動物愛護運動でも、恐ろしい絵図を見せつけて「ほらこんな恐ろしいことが行われているんだ、こんなことが続いても良いと思うかい?」と人々の恐怖感や嫌悪感をターゲットにしている例は多いです。
ところがHayhoe氏がいうのは、問題を解決するために行動を変えてみようかな、と人々が思うのはそこに希望があると感じられる時だということ。
これは社会心理学などなどでよく指摘されてきたことで、子育てとか自閉症の子供への対応の場面などで特に力説されていて、とっくの昔に知っているわよ、という人は多いと思います。
考えてみれば当然。
私もプラスティック・フリーJulyに参加して挑戦したり、なるべくプラスティックの使い捨てを避けるようにしていますけれど、周りであんまりにも無頓着に必要もない使い捨てプラスティックをガンガン使う人たちの様子を目にし続けると「一人で頑張ったって何も変わらない」と馬鹿馬鹿しく感じます。
でもそこでおしとどまれるのは、他にもプラスティックを減らそうとしている人たちが大勢存在するのを知っているし、あちこちの自治体や政府が使い捨てプラ禁止に動き出したりするのをみて微かな希望を再確認できるから。
Hayhoe氏がインタビューで参照しているデータでは、1980年以来発生している被害総額が1ビリオン・ダラー(日本円で103,639,000,000円)を超える自然災害の数はテキサスが一番多く、インタビューの時点(2019年12月)で106回以上を数えるということです。
広い国土の中でも、テキサスほど幅広くあらゆる自然災害を経験する州は他にないということですが、それにしても本当にすごい。
Hayhoe氏はテキサス州で現実として起きている気候変動の現象についてもわかりやすく指摘したうえで、人々の生活に即して、現在すでに我々が経験している自然現象や自然災害が将来どのように増加し、どの程度規模が拡大していくと予測されるのかを「将来に備えるために」「今のうちに対策を立てるために」伝えていくのが大切だと言います。
災害が多く、グリーンハウスガス排出も最悪な州にいて、どこに希望を見出すのか、という質問に対しては、実はテキサスはグリーンエナジーへの切り替えは順調に進んでいるという事実を指摘します。
- ウェスト・テキサスの綿花農家たちが風力発電のターバインを設置し続けていること(政府から助成金が入るシステム)
- 米国内最大の軍事基地、フォート・フッドでは2年前に風力と太陽エネルギーに切り替えて一億5千万ドルの税金を浮かせたこと
- ダラス市の自治体運営や公共事業は100%クリーンエナジーであること
- ダラス・フォートワース空港は北米で初のカーボン・ニュートラルな空港であること
- 前年の州の電力発電グリッドの19.2%は風力と太陽光だったこと
などを揚げ、炭素ガス排出では国内最悪だけれども、そんな州ですらグリーンエナジーへの切り替えを成功させることができているという点に希望を見出していると。
点と点とを繋げる会話、ぜひ見習いたいもの。