食いしん坊、北米でヴィーガンになる

北米で植物性食品を食べて強く生きる記録

ケベックの言語政策

 

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いんげんの胡桃砂糖醤油和え。写真は本文とは関係ありません。
 
カナダはバイリンガルな国家?

たまにカナダ以外に住んでいる人たちに言われて思い出すのですが、「カナダは英語とフランス語の2カ国語が公用語の国」です。

 

実際はケベックの公用語がフランス語で、お隣のニューブランズウィック州の公用語が英仏二か国語な以外は、どの州もテリトリーもほとんどの人たちは英語話者ですし、看板や州政府や市町村のお知らせなども英語です。

 

ケベックとニューブランズウィック以外の州にいる人たちに「フランス語は話せますか?」と聞いて、当然よ、っていう人はあんまりいないと思います。

 

オンタリオの中では首都オタワにかぎって言えば、連邦政府の仕事をする上でバイリンガルでないといけないせいもあってか、街中の看板などは二か国語。

ケベックに隣接しているせいもあってか、フランス語でちゃんと対応できる人が多いという印象を受けます。

 

むかーし、ローリングストーンズがトロント(オンタリオ州)のクラブでやったライブを収録したレコード、Love You Live というのがあって、たまに聞くんですが、ミック・ジャガーがフランス語で挨拶するんです。

ミック、気を遣ってくれててさすがだけど、トロントだから、観衆の9割以上はフランス語しゃべらない人たちなんじゃないかなあ。

まあ挨拶程度のフランス語だから多分みんな理解できてて「うおーー!!」て盛り上がってたとは思いますが。

 

ケベックを出ると、ニューブランズウィックとオタワ以外では本当にフランス語見ません。

 

 

そして、英語圏の州の人たちは「ケベックがフランス語表示にうるさいからカナダで出回る製品に英仏二か国語印字しなきゃいけないから経費がかかって値段が上がるんだ」

なんてまことしやかな文句言ってる人たちもいるとかいないとか。

 

ケベックは連邦政府に対しても色々と文句が多いですし、特例待遇を受けてきた歴史もあるので、厄介な州だと思われてる節はあります。

カナダ全州に適応されている法律に「ケベック以外はね」と注意書きがついてることもよくあります。

 

パスポートはカナダのものを使っているとはいえ、ケベック人の多くは自分たちがカナダ人だということをあまり意識していないと思います。

 

日本から個人旅行でカナダを訪問した方が「ケベックで英語を話したら通じないフリされるよって言われてドキドキしたけど、ホテルやお土産屋さんで英語を話せる人が出てきたのでよかった」なんてことをおっしゃるのを聞いたこともありますが、当然観光業に携わってる人たちは英語がきちんと話せますから、大丈夫。

 

 

 

 

ケベックの言語問題

州内の住民の9割はフランス語系なのですが、モントリオールとその周辺(Greater Montreal)の住民の内訳は

  • フランス語話者(フランコフォン)65%
  • 英語話者(アングロフォン)12.6% 
  • その他(アロフォン)20.4%

 

ケベック州内に住んでいるアングロフォンの80%はモントリオールに集中しているということですので、モントリオールをでたら一気にフランス語圏になりますが、モントリオールにいると、場所によっては英語の方が多く使われているようなところもあり得ますし、フランス語が話せない人もいます。

 

なので、モントリオール周辺に住んでいるフランコフォンの中には「ケベックにいるのになぜ英語を話しているんだ」と面白くない人たちも存在しますし、「北米という巨大な英語圏の中にポツンと孤立している小さなフランス語圏であるケベック州は英語文化に吸収されてしまうかもしれない」という危機感が潜在的に存在します。

 

 

 

分離独立を目指していた時期もあるケベック州の歴史は、ここでぱぱっと解説するのは難しいのでウィキペディアのページをリンクしておきますが、1980年, 1985年の二度にわたって行われた分離独立をとう州民投票で僅差で独立派が破れて以来、分離独立への動きは下火になっており、現在は分離独立を目指す、と公言する政党が州政府の政権を取ることはない状況で、人々はこの話題にうんざりしている(それより経済成長を重視して欲しい)という現状です。

en.wikipedia.org

 

それでもやっぱり登場するのが、ケベックのフランス語言語を保護するための政策。

2011年の国勢調査の時点で、自分は英仏バイリンガルであると認識していた州民は全人口の42.6%でしたので、人口の半分を越える人々が英語またはフランス語に自信がないもしくは喋れないと自認していることになります。

同じ国勢調査でカナダ全体における英仏バイリンガルは17.5%ですので、やはりケベック以外の州での英語ユニリンガル率の方が高いですね。

 

 

今までにもあれこれありましたけれど、言語に関する法律ってやっぱりナショナリスティックで抑圧的な雰囲気を含みます。

 

日本語という特異な言語を母国語として、他国民との交流がかなり限られている土地で、別言語を話す人たちとの交流もかなり限られている中成長してきた日本人にとっては、この「自国語を守らなければ」「自分たちのアイデンティティが失われてしまう」という危機感そのものがとても不思議な感じなのですが、フランス語だけで何不自由なく暮らしていけるわけではないアロフォンの私、法律案が登場したり、今度はこういうことになるらしいよと噂を聞くたびに若干いやーな胸騒ぎを感じないと言えば嘘になります。

 

ケベック以外のカナダでも話題になっているらしい今回の言語に関する法律について書こうと思ってましたけど、触りだけ背景の説明を書いただけで長くなってしまいましたので、日を改めて続きを書こうと思います。

 

 

うんざりすることもありますが、こういうケベック、嫌いじゃないんです。 


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