食いしん坊、北米でヴィーガンになる

北米で植物性食品を食べて強く生きる記録

冷蔵庫はどのように風味を変えたか

先週の日曜は久々にミート、ポテト&ヴェジの夕飯

夫のリクエストで肉、ポテト&ヴェジタブルのサパーとなりました。

私はテンペ。

ポークチョップにはアップルソースを添えるのが夫のお袋の味なんですが、冷凍してあったアップルソースかと思って解凍した奴が、アップルじゃなくてクインスジャムでした。

ちょっと酸っぱいけどまあそれでも良いよということで。

ポテトはマッシュして、グレイヴィーかけて。

もうそんな夕飯がホッとする季節ですよ。

 

 

どの食品を冷蔵庫に入れるか

日本生まれ北米在住の私、たまに二つの文化とそれぞれの常識というか習慣のズレの間でどっちつかずで混乱することがあります。

 

冷蔵庫と食品を巡る習慣はそのうちの一つ。

例えばモントリオールの友人たちは「トマトを冷蔵庫に入れちゃダメだよ!」と強く主張しますが、日本には居酒屋などに「冷やしトマト」なんていうメニューがあったり。

 

フランス出身の友人には「卵なんか冷蔵庫に入れないよ、平気だよ」と言われ、その後イギリスの食品店でも常温の棚に卵のパックが並んでいるのを見つけ「ヨーロッパの習慣か?」と謎が膨らみました。

 

卵に関しては、収穫後の卵を洗って出荷するルートで手元に来た場合は冷蔵し、そうでなく直接鶏のお尻の下からもらった卵を入手した場合は常温保存で良いのだそうです。

だから北米や日本のスーパーで冷蔵した状態で陳列されていた卵なら、家でも冷蔵庫に入れとくのが安心。

 

でもね、北米人は何でもかんでも冷蔵庫に入れますよ。

 

醤油も、調理酒も。

 

醤油なんか塩分すごいんだから大丈夫だし、調理酒なんか飲むんじゃないんだから冷やさなくっても良いのに、安全の観点から食料品は開封後は何でもかんでも冷蔵庫。

 

だから北米の一般家庭の冷蔵庫は巨大になっていくのでしょう。

 

でもね、日本で我が母がご飯の残りを容器に移し替えて、それを台所のカウンターの上に置いたままなのを見た時は「え?冷蔵庫に入れないの?」と。

 

母は、冷蔵庫に入れちゃうとご飯がパサっとするし、一晩くらい平気よ、と涼しい顔です。

 

そういえば子供の頃の家では残り物のお惣菜や冷やご飯がみずやにしまってあったっけ。

 

それに高校の頃のお弁当なんかはお昼までカバンの中に入ったままででしたね。

 

当時の教室はエアコンなんかなかったですから、暑い日の室温は何度くらいだったのか。

現在は仕事場に持っていった弁当はすぐに冷蔵庫に入れて、昼時にはそれをチンしてから食べるのが当たり前になってます。

 

職場にくる栄養学のインターンに聞けば誰もが「摂氏四度から六十度までの気温はバクテリアが最も活発になる、食品にとってのデンジャーゾーンです」と言い、調理後の食品の食べ残しは冷めるまでカウンターの上に放置してふと気がついたら午後3時、とかいうのは絶対危険だから、容器に入った食品は氷水を入れたバットの上に置いて素早く温度を下げ、一時間以内に冷蔵庫に移すこと、、と指導されます。

 

傷んだ食品でお腹を壊すのは嫌だから、自分もやはり冷蔵庫教に入信しつつあるかも。

 

 

冷蔵庫はどのように風味を変えたか

冷蔵技術の発展と普及によって食料の流通が大きく変化しましたが、それによって食べ物の味わいがいかに変化したのか、面白い記事を見つけました↓

www.newyorker.com

現在北米で流通しているトマトの多くは、味ではなくて流通に便利な性質(皮がしっかりしていること、痛みにくいこと、大きいことなど)の方が味よりも優先されて品種改良されてきた結果、昔のトマトやヨーロッパなどよその地域で出回っているトマトよりも美味しくないと言われています。

 

家庭菜園で収穫したトマトをお裾分けされたときに言われたのが「トマトは冷蔵庫に入れちゃダメ」ということ。

言われてみれば確かに家庭菜園で育てたトマトは、収穫するときからすでにトマトの香りがムンムンして、味わいが格別です。

あの格別な味わいを失わせるのが冷蔵だった、ということなんですね。

 

この、トマトを冷蔵庫に入れると味が落ちる説は結構当たり前みたいで、だけどそれを知らずに冷蔵庫に入れる人が増えている嘆かわしい昨今、という感じらしいのですが、日本で育った私同様、それが当たり前な人の期待するトマトの味と、冷蔵して失われる風味を知っている人にとってのトマトの味は違うんでしょう。

 

 

最近は冷蔵してもそのトマトのおいしさを失わないでいられるような、そんなトマトの品種を開発しようという研究があるそうで(上のリンクの記事の後半参照)研究者はトマトの味の特性を形成する数種の糖と酸と25種類の揮発性化合物を絞り込み、これに現在流通する品種と同様の収穫量、耐病性、冷蔵出荷能力を兼ね備えたトマトの品種を作り出す研究をいているそうです。

 

冷蔵しても味が損なわれないトマトが開発されたらすごい!のかもしれませんが、ちょっと違和感を感じます。

 

この記事でも指摘されてますが、夏野菜であるトマトですが現代では年間通じてスーパーに並んでいます。

どこか遠くから輸送されてきたトマトが。

そういう流通システムが全て悪だとは思わないけれど、トマトとか、果物とか、当たり前のように通年美味しく食べられるはずがない。

 

冬でもトマトやイチゴが買えてありがたいね〜、とありがたがって食べてれば良いという話ではなくて、旬の地元産の食べ物が遠隔地から冷蔵されて運ばれてきたものよりも美味しいという事実には理由があるんじゃないのか?やっぱり地産地消の方向へもっと努力する方が合理的なのでは?

 

冷蔵トマトの味向上の努力って、まるで暴飲暴食で胃に穴が空きそうになって痛みでもがいてる人に痛み止めを処方してもっと食べ続けろって言ってるみたいな感じがします(個人的感想です。)

 

 

スーパーマーケットで野菜を買うのが当たり前な「消費者」が畑でもいだばかりのトマトの味を素晴らしい特別な経験だと思っている一方、畑から来たばかりのトマトの風味が当たり前な環境で育った人々は、それが失われることに違和感を感じるのも納得。

 

なるほど、冷蔵技術の普及によって、食品をめぐる環境や我々の期待する味わいって本当に変わってしまっているんですね。

 

 

冷蔵できない不便さは想像できませんが


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