安全な飲み水
バックカントリーのカヌートリップでは、水道水のアクセスは当然ありません。
湖が水源。
飲むのも、料理するのも、洗うのも。
20年以上前にカヌー・キャンピングのクラスを受講した折には、湖の水を汲んで、飲めるように浄化するタブレットを入れて溶かして、飲む、それしか手段がなかったように記憶しておりますが、テクノロジーの進化のおかげで、最近ではフィルターボトルの性能も向上、ウルトラバイオレット光線で水質浄化するボトルも各種販売されていますので、バックカントリーでの水分補給も楽になったもんです。
バックカントリーでカヌーを漕ぎ漕ぎ湖から湖、川からポータージュから次の湖へ、六泊七日の旅をして気がついた点について書こうと思います。
あくまでも個人的な体験と感想ですのでご承知おきください。
Life Straw
スリランカとネパールへの旅のお供に選んだのがLifestrawとGraylのフィルターボトル。
フィルターストロー形式の製品は他にも数社から出てます。
Lifestraw製品にも、ストロー単体で携帯、利用するものもありますが、私が使ったのはフィルターが装着されたボトルです。
Lifestraw製品はバクテリア(大腸菌やサルモネラ菌も)、寄生虫(ジアルジア、クリプトスポリジウムを含む)、マイクロプラスティック、砂や土その他の濁りなどを99.999999%除去するという触れ込み。
重金属とウィルスは濾過できないそうです。(北米のバックカントリーで水を媒介とするウィルスはごく稀だそう。)
それだけ優れたフィルターだと、濾過スピードが遅い(ストローを口に含んで水を吸い込むのが重たい)のではないか、フィルターの交換時期が早いのではないか、など色々と検証してどの会社のどの製品が良いのかを比較検討するサイトやYouTubeなどもあります。
購入前に色々とネットで見ていた当時ちょうどボトルのデザインが一新された頃だったようで、新しいデザインと旧デザインの使い心地の差などもレビューされていて、新デザインのボトルは水漏れする説と、新デザインは取っ手が蓋の一部で、飲むために蓋を外すと本体のストロー部分にはカバーが付いてない(蓋を無くしたらどうなるの?という一抹の不安)という点を考慮して、まだ出回っていた旧デザインのボトルを購入しました。
旧デザインのボトルはボトル上部に付いている飲み口を倒すことで水が漏れないような構造です(が、ストローで吸い出す時の水圧の調整のための小さなベントが開いているので、ボトルを横に倒すと若干水漏れあり)
同行の友人は新デザインのボトルを持っていましたが、やはり蓋についてる取っ手の形とか個人的には持ち運びしにくそうでした。
旧デザインの私のボトルには短いベルトがついており、そこにカラビナーをつけてバックパックに装着してハンズフリーで持ち運んでおりました。
使用感:
カヌーから手を伸ばして湖の水をすくえば直ぐに水を飲めるのは大変便利。
ただ、ストローの吸い口に口をつけてチューチューと吸い出す必要があるので、例えばお茶が飲みたい時に沸かすための浄水を作りたい、他人に水を分けてあげたい、水分吸収のために電解質を溶かして飲みたいなど、そういう場合はこのボトルは使えません。
ポータージュの際は重いものは運びたくないからボトルの中の水(濾過前)を気楽に捨てられるのは利点の一つ。
Grayl
Graylのフィルターボトルは二重構造になっており、外側のレイヤーに汲んだ水を、内側レイヤーのボトルを挿入することで、内側レイヤー底部に付いているフィルターを通して濾過された水が内側に入り、ボトルの飲み口(注ぎ口)から濾過水を飲むことができるという仕組み。
このシステムの利点はなんと言ってもボトルの中に溜めた水全てが濾過されていて、直接ボトルから飲むことも別の容器に注いで使うことも可能なこと。
ウルトラバイオレット浄水やLifestrawで濾過された水にまだ若干味が残っていたのに、同じ湖からとった水が、Graylでフィルター後の水は無味だったことから、フィルターの質の違いを感じました。
サイトの触れ込みでは、フィルターは99.9%のウイルス、バクテリア、原虫 を除去、他にも微粒子、化学物質、重金属なども除去するそうです。
水質は一番安心とはいえ、カヌーに乗っている間に水が欲しい場合にはこのボトルは正直使い物になりません。
なぜなら、汲んだ水を入れたボトル(外側のレイヤー)にフィルターのついた内レイヤーをはめる作業に要する力というか重量は結構なもので、陸上でする場合も岩など表面の硬いところにおいて、両手をおいて体重をかけてグーっと抑え続けないと内レイヤーがはまっていかないのです。↓ (写真はGraylサイトより拝借)
こんな作業はカヌーに乗った状態ではできませんので、カヌー上での水分補給には使用できません。
でもね、朝目が覚めて湖の水を汲みに行くと、結構な確率で穏やかで波のない湖の水面には虫(dead or alive)とか藻とか、きっちり除去しないと気持ち悪くて飲めないよ〜、という異物がたくさん浮いているんですよ。
Graylをグイグイ押す腕にも力が入るってもんです。
www.grayl.caカヌートリップなど荷物の重量が気になる場合は、このボトルは結構重めなのでそこは難点かも。
ウルトラバイオレット
水を汲んだ後ウルトラバイオレットの光を当てて、水の中に浮遊するバクテリアを殺して無害な水にするというシステムですが、バクテリアよりも高度な生物(人間、虫、その他動物)はウルトラバイオレットでは殺せません。
なので、ウルトラバイオレット処理をした水を入れてもらった夫のウォーターボトルの中を見てみたら、なんだか小さな虫の幼虫?たちが元気に踊っているんです。
そういう小さな生物を濾過した後でウルトラバイオレット処理をするというシステムも存在するようなんですが、そうではなくボトルにウルトラバイオレット光線を発する電球?が装備されてるだけのものもあって、それだとちょっと安心して飲めないような気がしました。
光線を当てて殺菌するという仕組みですので、何かの障害物のせいで光線が当たらない部分があった場合はそこに浮遊するバクテリアも死滅しないままですので、ウルトラバイオレット照射は念入りに時間をかける必要があると言う人もいます。
多くの市町村で汚水処理に利用されている技術ですので有効ではあるはずですが、これ一本だけだとやはり若干不安かなと感じました。
光線を発する道具ですので、電池が必要です。
調理用の水
夕飯と朝食、朝のコーヒーやお茶に使う水は湖から汲んできたのをそのまま加熱して沸かして使っていました。
ご飯用の煮炊きはしばらく加熱するので、バクテリアも昆虫の卵や幼虫も死滅してしまうだろうと思うので、あえて濾過する必要がないというのはある意味納得。
ただ、朝のコーヒーやお茶用の水の沸かし方は沸かす人の気分というか、その時々で若干沸かす時間に差があった感じ。
沸かす時間はどれくらいなのか、と友人に聞いたところ、「人によって言うことが違うからね〜」と。
要するに沸いてることに気がついて、ああコーヒーが飲めるぞ〜、とそっちに気持ちがいっちゃったらそこで沸騰消毒処理は終了するわけです。
基本的に水質汚染のない綺麗な湖の水であることが大前提ですね。
フィルターの寿命とプラごみ
フィルターは洗浄して使い続けることができれば良いんですけれども、現在Lifestrawも Graylもそういった使用法は推奨していないようです。
Lifestraw は4000リットル濾過することができるとあります。フィルターの寿命がきたらストローを口にしても水が通ってこないからすぐわかる、と言うようなことが書いてありますが、どうなんでしょうね。
Graylのフィルターは基本的に250リットル(350回)ごとに取り替える必要があるそうですが、濾過する水の汚れ具合によっては250リットル濾過する前に寿命がくる可能性もあり。
濾過作業にかかる時間が24ozで8秒なのが、25秒くらいかかるようになったら替え時、みたいなことが説明書にありますが、購入当初から25秒以上かかってる私のようなユーザーはどう見極めたら良いのでしょうか。
交換フィルターの価格はGrayl(24oz)はカナダのAmazonで税抜47ドル少々。
現時点で私が所有するLifestraw とGrayl ともに、スリランカとネパールで一日1〜2回使用した後今回のカヌートリップですので、まだまだ寿命は残っております。
使わない間はボトルを洗浄し、フィルターをしっかり乾かしてから仕舞っておくこと。
飛行機に乗る場合は完全に乾かすか満タンに水を入れた状態かいずれにするべき、とあり、室温が零下になる場合などは使えないらしいなど、結構面倒なので本当に必要でないなら買わないでおいた方が良さそう。
必要な場合は必要ですけどね。
カヌートリップにはLifestrawと Graylの二本立てが良いかと