食いしん坊、北米でヴィーガンになる

北米で植物性食品を食べて強く生きる記録

La Cuisine Creole 

ラフカディオ・ハーンといえば、小泉八雲、怪談、耳なし芳一、知らない人はいませんよね、日本では。

 

私は特に小泉八雲の著書が好きだったとか、彼の日本での生活に関して子孫が語った書物やテレビのドキュメンタリーなどに注意を払っていたとか、そういうことはありませんでした。

ひょんなことから、ハーンがニューオーリーンズで新聞社で働きながら書いたという、La Cuisine Creole: A Collection of Culinary Recipes (1885) という本を手にしまして、地方色の濃い食べ物に関する本は面白いかも、と読んでみました。

 

結構面白い本です。

130年以上も前のレシピですから、現在の食や健康の価値基準とは若干異なることももちろん出てきます。

現在「レシピ」と言うと、材料も手順も、事細かく丁寧に記述してあるものが標準ですし、注意事項やらコツやらが満載です。

そのため、レシピをじっくり読んで料理すること自体が結構な手間に感じる怠け者もあり(私のことです。)

一方で、ハーンの「レシピ」はとても大雑把でシンプルです。

正確な味や舌触りを再現すると言うよりも、「この野菜は下ゆでしてからスライスして、衣をつけて揚げて塩胡椒して食べると美味しいよ」と言うような、コンセプトを伝えている感じです。

 

自分がよく知っている野菜なんかだったら、旬の時期なんかにいただきものがたくさんあって、どうやって食べようかなあ、同じことばっかりで飽きちゃったなあ、と言う時にそう言うコンセプトをいただくとメニューの幅が広がります。

 

ヴィーガンの私には、彼が紹介している肉料理やカニ料理なんかは試せませんけれど、野菜料理は参考にできないこともないかも、、、。

いや、あんまりならないか。

 

当時の調理法として一般的だったのか、アイルランドで育ったハーンだからこそなのか、ほうれん草の調理法には驚いて椅子から落ちそうになりましたけど。

 

To cook spinach

Wash in two or three waters, as the grit adheres very closely to spinach; when well-washed, boil it one half hour in clear water; add a little soda, if it does not look a nice green. When soft, drain it well and chop very fine-it cannot be too fine; add butter, salt if needed, and pepper to taste; garnish with hard-boiled eggs cut in fancy shapes......

 

適当な訳ですがここに書いておきますね。

ほうれん草の調理法

葉っぱに土がしっかりくっついているのでバケツの水を二、三度変えて洗う;良く洗ったら、きれいな湯で30分茹でる;きれいな緑色に見えなければ重曹を加える。やわらかくなったら水をよく切り、細かく切るー細かすぎるということはない;バター、塩、胡椒を加える;固ゆで卵をきれいな形に切ったものを添えてやる(以下略)

 

 

よく、不味い料理で有名なイギリス料理はほうれん草が溶けてしまいそうになるまで茹で倒す、って言いますけれど、ハーンもそうですね。

アイルランドですからね、食文化的にはイギリスと似たようなものがあるんでしょう。

30分も茹でたら繊維は感じられなくなってしまうと思うのですが、その後で細かく切るべし、細かくしすぎるということはありえないんだからとことん細かくすべし、というような指示がありますから、要するにこれは、こちらのステーキハウスなんかで付け合わせに良くある、クリームド・スピナッチ、っていうやつなのかもしれませんね。

 

昔のほうれん草は現在の品種改良されたものに比べるとアクも強くて硬かったのではないか、という気もしますので、ひょっとしたら30分茹でても消えてしまったりはしなかったのかもしれませんけれど。

 

この後、アスパラガスのレシピもあるのですが、こちらも20分から30分茹でるようです。アスパラは私はシャキッとした歯ごたえが好きですが、まあグリルしてクタッとなったのも悪くはないので、そういうことでしょうかね。

 

それにしても後年日本に来て日本人の奥さんと家庭を築いたハーン。

奥さん(または女中さん)が料理する野菜など、どう思ってたんでしょうね。「なんだこのほうれん草は!歯ごたえがあるじゃないか、、全く日本人の好みといったら」

と嘆いていたのかどうか。

 

私が調理するインゲン豆は、義母にはちょっと硬いと感じられるようなので、義母と一緒の食事の時はインゲン豆は「茹ですぎ」にするのです。

何しろ義母も、ほうれん草を煮詰めるタイプですからね。

 

 

日本語版は1998年版が中古で流通しているようで、値段がものすごいことになっていますけれど。再版されるほどは需要がないのだけど、高値でも買いたい人がたまにいる、って言うことなんでしょうかね。

https://www.amazon.co.jp/ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本-ラフカディオ-ハーン/dp/4484981157/ref=cm_lmf_tit_11

 

ハーンはギリシア人の母とアイルランド人の父の間に生まれ、アイルランドで父方の親類に育てられたようです。

日本で小泉はつさんと結婚し、子供を4人ももうけて、のちに帝国大学になったような学校で英語を教えたりと、著作活動以外にもずいぶん活躍していたようですが、亡くなったのは54歳という若さ。

日本滞在中のハーンは、怪談など民間伝承を書きとめたりした以外にも文学、政治などに関する執筆活動や、英語教育に心血を注いだようです。

でも日本の食に関する書物は残していないようで、食に対する関心は文学や教育よりも影が薄くなっていたのか。

はたまた、ほうれん草の茹で加減がお気に召さなかったか。

 

 


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