ウェールズの田舎と羊
田舎には羊がたくさん放牧されています。
よくニュージーランドの人口は羊の数より少ない、とか言いますけれどウェールズもひょっとしたらそんな感じではないかな。
何しろどこにでもいます。
単純な私は、きっとウェールズやイングランドの田舎町には、地元の羊からとったウールの糸やウール製品を扱う小さな店なんかがあるのではないか、なんて思っていましたが、まるでそんなものは見かけませんでした。
食料品以外の買い物をしに出かけなかったので、気がつかなかっただけかもしれませんが。
訪問した時期(七月中旬から下旬にかけて)のせいで、近よってみると、どの羊も毛が刈り取られたあとで、さっぱり夏仕様なのはいいんですが、ふわふわの羊!と言う絵柄を期待していたので少々がっかり。笑
中には毛を刈り取られていないフワフワ羊もいましたが、これはどうも若い子だけみたいで、全体的には「スッキリ夏のスタイルになった動物の群れ」と言う印象。
夏、暑くなる前に刈り取るのはまあ、羊のためだからしょうがない、で、刈り取ったフリースはどこでウール製品になるのでしょう?
と地元の方に聞いてみたらば「ウール?毛糸?ならないよ、二束三文にしかならないから。刈り取ったあとはゴミにしてはいけないから、最近は断熱材として利用されてるよ」
と言うことで、あちこちの丘で草を食んでいる羊たちは、食用だそうです。
かなりたくさんいますからね、どれだけ羊を食べるんでしょう英国の方達!
と思ったら、輸出も結構しているんですね。
夫は一度だけラム料理を食べたのですが、その翌朝一人で海辺のパブリック・パスを散歩したら、羊らしからぬ態度の大きな羊と遭遇したそうで、夫の目をグッと見つめて逃げる様子もなかったとか。
夫は「ごめん、昨日君のブラザーを食べてしまったよ」と心の中で謝ったそうです。
基本的に羊の習性は、危険や敵に遭遇したら逃げます。
羊の視野は320度くらいカバーするようで、振り向くことなく後ろも見えるとか。
だから私がいくらこっそり近づいても直ぐに逃げられるわけですね。笑
でも羊同士では喧嘩したりもするようです。頭突きしたり。
ブレコン・ビーコンズやスノウドニアという高地(山地)などなどにハイキングに行ったのですが、ブレコン・ビーコンズの丘は特に、南で暖かいせいもあるのか、結構な標高までというか頂上の部分までいたるところに羊の糞が。
地元では芝生の広い公園などでカナダギースの糞が地雷のようにあちこちあって、踏まないように歩くのが大変なのですが、ウェールズでは羊でした。笑
ウェールズのみならず、英国では私有地であっても人々が散歩やハイキングで歩いて行く途中にある土地には「パブリック・フットパス」といって、人々が通り過ぎる権利を示した表示があったり、表示がないまでも柵を通り抜けられるようになっている「スタイル」があったりします。
ということで、農家の人の顔をみることもなく、丘の頂上を目指してあちこちの農家の牧草地を通り過ぎること何十回か。
実際は羊農家なのか牛なのか両方いるのか、はたまた馬やその他多くの家畜を多種多様に放牧するのか、何しろ農家と知り合いじゃなくてもどんどん入り込むので、糞の種類を見て「ここは牛もいるみたい」と判断する程度ですが。
帰りの飛行機で見つけたBBCのドキュメンタリー、Secret Life of Farm Animals, Series 1, Sheep. 一部こちらで観られます。
ドキュメンタリーでも解説されていますが、羊は仲間同士の顔も人間の顔もちゃんと覚えているし、表情から相手の感情を察知することもできるとか。
知能レベルでは豚に次ぐほど賢いそうです。
肉用として屠殺されなければ、羊は平均して寿命が10〜12年ほどだそうです。
大型犬と似たようなもんでしょうかね。
彼らの様子を見ていると、現代のファクトリー・ファームで体の向きを変えることすらできないような狭い檻に押し込められて屠殺されるまでの短い一生を生きる牛や豚に比べたらそれこそ伸び伸びと幸せに生きてるよなあ、と感じます。
でも実際には寿命を全うする羊はなく(食用だから)、子羊を産ませるための母羊も生産的な年齢は7歳くらいまでなので、それくらいになると次の若い母羊に代替わりさせるため、年取った母羊は取り除かれるとか。(上のSheep101のリンクを参照あれ)
取り除くって一体何でしょう。(上のリンクには詳細は見当たりませんでした)
そういうことを考えなければ羊だらけの牧草地はとてものんびりしていて美しい田舎そのものです。
そういうこと考えててものんびりしていて美しいですけどね。
リンクのBBCのドキュメンタリーで出てきたRory君は大きくなってどういう考え方をする大人になるのかな、、
また行きたいわー、という気持ちは変わらず。