Dark Waters 2019 トッド・ヘインズ監督作品
マーク・ラファロが弁護士 Rob Bilottを演じます。
Rob Bilott氏は実在の弁護士で、本作は彼の回想録とNew York Times Magazineの記事(下記リンク参照)をもとにドラマ化されたものだそう。
作中のデュポン社の犯罪も現実です。
化学薬品企業弁護士として法律事務所で働くロブのもとに、ウェスト・ヴァージニアの酪農家が助けを求めてやって来た事がきっかけで、ロブは超大企業デュポン社がテフロンなどの製品開発・生産の段階で隠蔽して来たPFOAと言う有害化学物質による水質汚染と、その危険を知りながら労働者や周辺住民、消費者を犠牲にし続けてきた事実を知ることになります。
あらすじを書くって結構難しいですね。
日本語でこれなんていうの?なんていちいち調べてたら時間ばっかりかかりました。
日本語版ウィキを見たら上手にあらすじが書いてありますので、気になる方はこちらをどうぞ。
2000年に公開された映画 Erin Brockovichも、PG&Eによる水質汚染の秘密を暴き正義を勝ち取る、環境犯罪と闘うお話。
邦題はなんだろうと思ったら、そのまま「エリン・ブロコヴィッチ」でしたね。
正義のために闘う法律ドラマにありがちな、テーマになっている犯罪の要素やウィッスルブロウアーに降りかかる嫌がらせや命の危険を感じるシーンなどが話の展開の鍵になっているのですが、企業弁護士という立場にありながら反企業訴訟を起こすという、弁護士としてのキャリアや法律事務所としての立場を危機に晒す行動に出る主人公に対して、法律事務所の同僚や上司、妻といった周囲の反応が「驚き→反発→応援」と変化する様子があまりきちんと描かれていないとは感じました。
純粋に映画のお話とだけ見ると、そこが批判されるかなと思うのですが、こういう作品の価値は芸術作品としてよりも社会問題にスポットライトを当てる部分だと感じるので、私は観てよかったと思っています。
2時間以上あるけど、夢中になって観ていたのであっという間に終わった気がします。
追記)日本版のレビュー記事を見つけましたのでリンクを貼ります。
題材となった本当のお話に関する記事リンク集
New York Times Magazineの記事はこちら。写真はRob Bilott氏。
この記事を読むと、本作はかなり事実に忠実に描かれている事がわかります。
Bilott氏の闘いはデュポン社に被害者への賠償金の支払いや政府機関への罰金の支払いなどをもたらしましたが、例えば2005年にデュポンがEPAに支払った16.5ミリオン・ドルの罰金は、同年のPFOA製品からの収益金の2%にも満たないものだそうです。
これってプラスティック汚染がひどいからプラスティックの買い物袋の利用を抑えようとお店で10セントだの20セントだの課金したって痛くも痒くもないから消費者が袋を利用し続けるような、、
もしくは図書館の返却期限を過ぎてしまっても、超過罰金として一日10セントとか課金されると逆に「お金を払えば大丈夫」と期日を無視する心理が働くのと似てるような、、、。
とにかく、巨大企業にとってはこう言った支払いは痛くも痒くもなく、今後も環境汚染や人的被害を引き起こしながらも、その責任を取ろうとしません。
2013年にデュポンはPFOAの製造と使用を停止しましたが、今度はやはり現時点で規制の全くないPFOAに類似した化学物質に切り替えてテフロン製造は継続しています。
デュポン社によると、その新たな物質は「十分な研究結果により安全性が確信される」ものだそうですが、誰がそんな言葉を信用できますか。
ウォータープルーフとかノンスティック、染みになりにくいと言った「これをスプレーするとあら不思議」な魔法の薬品またはその処理がされている衣服や鍋類などの製品にはPFOA類似の(ほぼ化学構造が同じ)化学物質が使用されていると考え、避ける事が最善の策だろうと思います。
映画の最後でも知らされるのですが、現存するアメリカ人のほぼ98%の血中からC8(PFOA)が検出されるのだそうです。
これだけ広範囲に汚染が広まっている薬品、これはアメリカに住む人たちだけの問題ではないと感じます。
どうやって私たちの血中にこの物質が混入しえたのかといえば、汚染された空気、水、汚染された地域でとれた農産物、魚介類、畜産&酪農製品、調理に使ったノンスティック・フライパンや炊飯器、化粧品や洋服、臍の緒や母乳を介してなどなど。
汚染されているのは人間だけではなく、カリフォルニアのオットセイも、アラスカの白熊も、アトランティック・サーモンも、研究者がテストした動物はどれも血中にC8を保持しているそうです。
そしてこの物質は時間を経て分解されたり薄まったりして消えていくことはなく、環境や体内でただ蓄積されていく。
テフロンとデュポンの害についてもっと詳しくはこちら↓
雑誌アトランティックの記事
PFAS, テフロン以外には何に使われているか
PFAS(perfluoroalkyl and polyfluoroalkyl substancesの略。PFOAは4700種類あるPFASの一つ)が使用されている製品はテフロンだけではなく、水、油、汚れをはじく製品各種に入っています。
- 食品のパッケージ(Pizzaの箱、ファーストフードやテイクアウト容器、マイクロウェーブで作るポップコーンの袋など)から食品に混入する
- ノンスティックの調理用品
- 汚れにくい、燃えにくい、防水などの加工のされた製品(家具、カーペット、洋服、靴、レインコート、ゴア・テックス、スポーツやキャンピング・ギアなど)から長期間にわたって空気中に放出される
- 飲料水(市町村の水道水、井戸水、湧き水など。)
- 掃除用クリーナー製品、シャンプー、デンタルフロスなどのケア製品、マニキュア、アイ・メークアップ製品、スキー板用のワックス
- ペンキ、ニス、防水塗装
- 消防士が使う消火用の泡(家庭用の消化器も同様でしょうか?)
- 飛行機や車の部品のコーティング
詳しくはこちらのリンクでどうぞ↓
下のリンクはPFASについて、人体への被害について、またアメリカの話ですが、連邦と州政府への働きかけや取り組みなどについて、6分少々でまとめられたビデオです(英語。)
そうそう、あの映画のErin Brokovichさんも、マークルファロ氏率いる抗議運動「ファイト・フォーエバー・ケミカルズ」に参加を表明したそうです。
現在の便利な暮らしにはいろんな有毒な薬品を使った便利用品が貢献しているのですね。