食いしん坊、北米でヴィーガンになる

北米で植物性食品を食べて強く生きる記録

B級グルメで命と心をつなぐ、プリズン・ラーメン

  

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家にあるものでバーベキュー。野菜はじゃがいも、玉ねぎ、ナス、冷凍してあった代替肉バーガーと。
みんな大好き、ラーメン

最近は北米でもヨーロッパでも知名度と普及度が上がってきているラーメン。

モントリオールにも、ラーメン屋さんというのか、日本ぽいレストランで、寿司ではなくラーメンを全面に出している店がちょこちょこと増えてきた模様です。

 

 

自分で作るヴィーガン・ラーメンも結構いけます。

フラッとラーメン屋に入れないところに住んでいる上ヴィーガンですから、自分で作るしかない、ということですが、案外美味しいんですよ、ヴィーガン・ラーメン。

casse-pied.hatenablog.com

  

 

最近ではこちらのスーパーでも、日本のメーカーのカップ入りのや袋入りのああいうラーメンが手に入りやすくなりましたが、しばらく食べないでいるうちに、あの添加物の粉「スープ」が本当に合わなくなってしまいました。

 

別に食べなくても生きていけるから良いのですが、たまに映画などでそういうジャンクなものを食べている場面など目にすると「ああ、懐かしいな」という気持ちがします。

 

 

監獄ラーメン?

というわけで、こんな本と出会ってしまいました。

Prison Ramen Recipes and Stories from Behind Bars (Clifton Colling Jr and Gustavo "Goose" Alvarez)

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www.amazon.ca

 

うちの夫はBreaking Bad だとか以前は CSI Miamiなどなど、いわゆるコップ・ショーや犯罪ものが好きなのですが、私は作り話であれ人が殴りあったり殺しあったりしてるのを見るのがどうも好きになれないので、ショービジネスが描く「犯罪者の姿」みたいなものにも疎いのですが、映画やテレビが現実にどこまで近い様子を描いているのか、あまり信頼してもいないので、気にはなりません。

 

けれども監獄ではタバコが物々交換の際、高価なものであるとか、監獄の中には囚人社会の掟があるもんだとか、それくらいはなんとなく知って(?)いました。

 

が、最近はタバコよりもラーメンの方が価値が高いんですって。

 

監獄内に限らず、物々交換のことをBarterと言いますが、近年政府による予算削減の影響を受け、十分な食事が与えられないでお腹を減らしている囚人たちにとってラーメンの価値は、それを食べるか食べないかに関わらず、高価なBarter moneyなんだそうです。

 

 

 

アメリカの犯罪対策(監獄を増やし犯罪者をロックアップし、プライベート企業に監獄の運営をさせる)の失敗は明らかなところですが、現実問題として、囚人の人権蹂躙の問題もあちこちで報告されているようです。

 

囚人が十分な食べ物を与えられていないのも問題の一つだそうです。

 

 

アメリカの監獄と日本やカナダのそれはまた別の話だとは思うのですが、カリフォルニア州で何度かお勤めなさった経験のあるグスタヴォ(通称グース)さん(と他の方も)の体験談と、監獄内で試行錯誤してたどり着いた美味しいラーメンのレシピを集めたこの本、「ネギと、わかめと、あったらもやしやキャベツも」という手抜き日常食感覚をはるかに超えた想像力豊かなラーメンの姿が垣間見えますよ。

 

"In most cases, if you're lucky enough to know somebody that works in the kitchen, they can bring you back some raw onions, maybe some chives, some jalapenos, fresh vegetables. And then there's times when you don't have much but tap water, a bag of Cheetos — Flamin' Hot Cheetos at that — and a couple of soups. And you know what? You make a little tamale."

 

ラーメンは安価で、カロリーたっぷり(飢えている時にはこの言葉がポジティブになるんですね)で添加物とはいえ味もしっかりつきますから、まずくて量の少ない「臭い飯」ではなくて自分たちで美味しいと思える工夫をして空腹を満たすのにちょうど良い食材なようです。

 

 

調理器具や食器なども整っていないところですし、電子レンジなども使えない条件での調理には、ゴミ袋やバケツ、電極などが活用されるのだそうです。

ワイルドですね。

 

 

この本の中でグースさんの体験談として、刑務所内で起きたライオットでグースさんと囚人仲間の命を救ったラーメン・スープのお話があるのですが、結構良いんですよ。

この逸話はグースさんがこの本を書くきっかけでもあったそうで、以下はNPRのインタビュー記事からの引用です。

記事中Alvarezとあるのはグースさんの苗字です。

 

It was a fight between black and Hispanic prisoners, he says, and some buildings had caught fire as a result.

 

In the chaos, Alvarez recalls, dozens of African-American prisoners who'd evacuated their own burning building approached the building he was in, seemingly intent on attacking him and other Hispanic prisoners inside.

Then, "out of nowhere, an older gang member walked up to 100 inmates and talked them out of it," Alvarez says. How? By sharing his food.

"They were stuck there for hours, freezing in the cold," Alvarez says of his would-be attackers. "This older guy saw that and started feeding them." Soon, he writes in his book, he and other Hispanic prisoners gathered up all the ramen and other commissary items they had on hand to create a huge feast.

"And we became close ... through this meal. It was kind of like a bridge," says Alvarez.

 

ライオットを起こした若手の黒人の囚人グループがグースさんたちのヒスパニック系囚人のいる建物にやってきて、ドアをこじ開けてヒスパニック系囚人を襲撃しようとしていた折に、寒さと飢えのなか何時間も外にいた彼らにグースさんたちがラーメン・スープを作って振る舞い、危機を逃れたというお話です。

 

www.npr.org

 

もちろん、ラーメンなんか好きじゃないという囚人なら、ラーメンと引き換えに野菜やフルーツなど自分が欲しいものを得るのに使うのだそうです。

www.npr.org

 

 

肝心なレシピは

ヒスパニック系のグースさん、メキシカン風味が基本なようです。

ヴィーガンの私、実際に袋入りラーメンやドリトスやポーク・リンドを買ってきてレシピ通りのものを作る可能性はありませんが、ちょっと参考にできるものはないかしらと結構真剣にパラパラめくってみました。

どれもソーセージとかポーク・スキンとか加工肉が風味を加えるポイントになっているようで、これを豆腐にしてもダメっぽいなあ、という印象。

 

一つ気になるのがWet Ramen Burrito(59ページ。)

チップスの袋の中にトルティーヤを一枚敷いてから、パッケージの中で割って細かくしたラーメンとチーズ風味のクラッカーやチートス(日本のカールみたいなお菓子)、他の材料も入れ、上からもう一枚トルティーヤを入れたら袋を利用してぐるぐるとタイトに巻き、その上から熱湯を注ぎ、袋を閉めて八分置いて食べるのだそう。

 

ソーセージとチーズ風味のお菓子がヴィーガンにはダメですが、チーズっぽいヴィーガン食材と偽ソーセージかスモーク豆腐などでやってみても良いかも。

 

ラーメンをふやかすために熱湯を注ぐのでしょうけれども、トルティーヤもふやけてしまうのではないのか、とか、ちょっと不安はあるんですけどね、ラーメンとコーンチップスやクラッカー入りのブリートーって面白そうです。

 

 

子供たちに数カ国の刑務所の食事を試食してもらうビデオ↓

 オーストラリアの人権を尊重した刑務所の食事が一番好評で「もし刑務所に行くならここに行く」というコメントまで。

 

 

 

食事はホッとする心の糧でもあるはずですからね、刑務所内では難しいかもしれませんが。


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