フランス「ブラジルの森林破壊の輸入をやめる」
フランスがブラジル産の大豆の輸入を大幅に削減する計画を発表しました。
アマゾンの熱帯雨林が広大で果てしないエリアだったのは今は昔の物語で、森林伐採をして効率よく金儲けができる大豆などの栽培面積を拡大し続けるブラジル政府。
アマゾン森林破壊は本当に恐ろしい勢いで進んでいます。
森林保護をしていても収入は増えませんが、森林を伐採して大豆を植えたら輸出して収入を得られるとなれば、そりゃあブラジル政府も環境保護より経済活動を重視するでしょうし、「森林保護をせよ」と言ったその舌の根が乾かないうちに「そこで栽培した大豆を190万トン買いましょう。」というのでは、「森林保護をせよ」はリップサービスだと思われても仕方ありません。
というわけで、フランスは森林破壊の輸入をやめることにしたそうです。
記事によると、フランスは現在、EU最大のブラジル大豆粉の輸入国であり、年間190万トンを購入しています。
フランスからの売り上げが失われることはブラジルにとって厳しいでしょうけれど、それよりもブラジルのジャイール・ボルソナロ大統領が繰り返す反環境の発言と政策が、ブラジル産物の大規模な国際ボイコットを引き起こすのではないか、とそちらの懸念も大きいそうです。
大量の大豆はなんのため?
大農業国家フランス、国内でも大豆の生産は大々的に行われています。
そしてEU諸国に輸出しています。
自分の国で生産して輸出している大豆を、ブラジルから大量に輸入してフランスは何をしているんでしょう?
と素人の私は不思議に思います。
日本出身の私には「大豆の五目煮、豆腐、みそ、醤油、忘れちゃいけない、納豆と枝豆」という大豆ですが、世界的には人間の食糧に回るのはごく一部で、多くは別の用途に回ります。
ノース・キャロライナの大豆生産者組合のサイトに詳しく載っていましたのでまとめてみます(リンクとイラストも参照ください)
- オイル(食用及びバイオディーゼル用)
- ミール(オイルをとった糟)の大半が動物の飼料
- ごく少量のミールは加工食品の材料
- オイルの7割近くは加工食品の材料
- 残りのオイルの大半はバイオディーゼル
- 残りは工業資源として塗料、プラスティック、洗剤などの生産に
下のイラストはアメリカで生産された大豆の用途の内訳をわかりやすく解説してあります。
これはノースキャロライナの大豆の話ですが、若干の違いはあれ、大体が同じような使われ方をしていると考えて良いと思います。
石油製品で作っていたものが大豆オイルに切り替えられているのですね。
マヨネーズ、マーガリン、サラダドレッシングなどの原料表には確かにソイ、って買いてあると思います。
お菓子とかチョコレートなんかにも使われてるんでしょうね。
フランスがブラジルから輸入する大豆は自国産の大豆とどう違うのか、詳しいことはわかりませんが、ひょっとしたら輸入は飼料用専用かもしれませんね。
大豆が動物の飼料になるわけ
大豆を絞って油をとると、その大豆の8割は搾りかすで、油は2割だけということですから、残った搾りかすを有効に利用しないと大量にゴミ(とロス)が出ます。
でも搾りかすでできることはやっぱり動物の餌が大半なんですね。
この「ミール」って製造プロセスが違うから「おから」にはならないんでしょうかね。
子供の頃オカラの炊いたんが大好きだったのですが、お豆腐屋さんからお豆腐を買うと無料でおまけしてもらえるものだったんですよね。
あれはうちがお得意さんだったからだと子供の私は思い込んでいたのですが、多分お豆腐屋さんは有り余るオカラの処理に困っていて、オカラが欲しいお客さんにはホイホイとあげていたのだろうと今は思います。
処理しきれないオカラは豚の餌になるんだ、と誰かが言っていたのも覚えています。
私はオカラが欲しいから豆腐を作ったりするんですけれど(最近は作ってませんが)モントリオールのどこかでオカラを販売してくれたら買うけどなあ。
オカラ、次のスーパーフードにならないかなあ。
大豆が動物の飼料にうってつけなのは、やっぱり値段も抑えられるしタンパク質も繊維質もたっぷりだからでしょうね。
まあそこにあるから、というのが大きいでしょうけど。
あと、80年大90年代には食肉用に屠殺した動物の死骸の食用にならない部分(骨、筋、脳や心臓などの内臓、尻尾など)を処理して(同じ種の)動物の餌にしていましたが、BSEなどの病気が蔓延したため、これらを餌にすることは広く禁じられましたので、大豆は有効な代替飼料になったんでしょう。
大豆オイルは石油よりクリーンか
石油がクリーンなエネルギー源ではないという認識はすでに定着してます。
それでも現在の人間の活動を支えるエネルギー源として、ずっと依存し続けてきていますから、気候変動の危機を目の前に「切り替えるべき!」といくら言っていてもすぐには難しい現実があります。
それでも1950年代の、石油が湯水のように手に入って何でもかんでも石油から作って喜んでいた頃に比べると、脱石油は進んでいますよね。
では何に切り替わったか。
ここで大豆とコーンが登場して便利に使われているわけですが、植物性のオイルは海底や砂漠を掘り出して真っ黒いオイルが湧いてくるのに比べると純粋でクリーンに感じますけれど、これを効率的に大量に生産しようとする事による弊害はやはり見過ごせません。
同じ土壌に同じ植物を繰り返し植え続ける、しかも自然界の多様性とは程遠い、モノカルチャーですから、土壌はすぐに疲弊してしまいます。
これに対して人間の「技術」「知恵」は農薬の濫用や「種の改良」という対策を打ち出しましたけれど、この弊害もあちこちで広く認識されるようになって久しいことです。
それでも大豆の生産は儲かるのでしょうね。
アマゾンの破壊のスピードと、そのために加速するグリーンハウスガス排出量(森林による抑制効果が失われるという点でも)を考えると、やはり大いに心配。
イギリスでも、ブラジルから仕入れた大豆ミールを餌としたチキンを食べることが森林破壊をサポートすることに繋がっていることに注目が集まっている模様です。
消費者の知らないことだらけですが