食いしん坊、北米でヴィーガンになる

北米で植物性食品を食べて強く生きる記録

禁酒法と州営酒店SAQ100周年

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SAQでもらえるフリーマガジン。嬉しそうに飲んでるおばちゃんたちの写真が表紙

 

カナダ国内ではアルバータ以外の州では種類の販売は基本的に州営のアルコール販売店が専門にやっています。

 

ケベックの場合は他にはデパナと呼ばれるコンビニエンスストアがビール販売の重鎮。

あとは食料品のスーパーでも。

 

デパナやスーパーでもワインもウィスキーも買えますけれど、低品質大容量というか、やはりちゃんとしたのを買いたければ州営の店へ行くべし、ビール以外は。

 

全ての州のことを知ってるわけではありませんが、フレンチ系のケベック州はイングリッシュカナダに比べると飲酒に対する姿勢が比較的おおらかと言えます。

 

オンタリオは私の脳内では「アンチ・アルコールのピューリタンが州営のリカーコントロールボード(LCBO)で州民が簡単に酒に手を出せないようにコントロールしてる土地」です。

 

だってね、田舎町のLCBOは日曜なんか4時に閉店するんですよ。

夫が子供の頃は日曜は開いてなかったそうですけれど。

 

最近は変わったかな?

 

現在の州知事に変わってから、スーパーでもアルコール飲料が手に入るようになりましたし、保守派のプロ・ビジネス(プロフェッショナルという意味ではなくて資本主義的という意味です)のフォード知事ですから。

 

もっとプロ・ビジネスで新自由主義保守派なアルバータ州は、資本家がお金儲けするのに州政府が介入すること自体嫌いますから、だからお酒も個人商店が好きに販売できるのですね。

 

ケベック州は社会主義傾向が比較的強い上文化背景にカソリックの影響も強い土地ですので、酒類販売はSAQ が主にやってますけれども、オンタリオみたいに「リカー・コントロール」じゃなくて、名前からも明らかなように、ケベックのアルコールのソサエティsociete d'alcool du quebecなのです。

 

そのSAQ、今年で成立100周年らしいです。

先日店頭でもらってきた冊子をみて初めて気がつきました。

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そうか、100周年なんですか、と気がつかされたインサート小冊子

 

SAQ創設にまつわる歴史が解説されてます。

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そこで気がついた、SAQって禁酒法廃止後にできたってこと?という史実

ケベック以外の州に行くと、北米では飲酒=罪だと思われてるという感覚が色濃く感じられるのですけれど、ケベックはやはり、何もかもをsin(原罪)とするカソリック・チャーチの元に生きてきた人たちの「そういう建前は置いといて」という態度でアルコール飲料の楽しみを悪とみなさないおおらかさを感じます。

 

 

 

禁酒法成立への運動

社会保障という概念や制度が整備される前の北米の都市社会では、各家庭の収入は一家の父親の労働収入が全てもしくは大きな部分を占めていたわけですが、給料が出たら喜び勇んでサルーンとかバーに出かけて飲んでしまい、家でお腹を空かせている子供達に食べ物を与えてやることができず、寒い冬を乗り切る防寒着だって子供が大きくなれば買い替えてやったりしたいのにそれも叶わず、貧困に喘ぐ家々の妻たちが、これではやっていけないわ、と。

 

「アンジェラの灰」の世界ですね。

 

 

下のリンクのページでカナダにおける禁酒法の歴史の項目を読んでいたら、アルバータ州を舞台にした禁酒法執行を職務とする州警察の警官とブートレガー(違法で酒を販売する人たちのこと)の大ボスとのドラマのような史実を説明するビデオがあって、面白かったですよ。

www.thecanadianencyclopedia.ca

 

 

禁酒法の背景とケベック

 

カナダの禁酒法は基本的には州政府主導で、あとは街や自治体単位でバーの営業を禁止するところがあったりなかったり、というあまり統一性を感じない(住んでる人たちの好きにして、ってことか)印象を持ちます。

そういえばモントリオールでも南西部の工場労働者の住む地域だったVerdun地区は、つい最近まで「ドライ」な地区で、バーなど酒類を出す店の営業が認められていなかったのでした。

 

SAQの冊子にも自慢げに書いてあるように、1917年にカナダのあらゆる州で禁酒法が成立し始めた頃、ケベック州だけは住民の大多数が禁酒法成立に反対したため、飲酒は許容されていたとか。

 

その後1919年にはビールとワインの販売が「合法」になったそう。

許容されていたんだったら元々「合法」なんじゃないかと思いますが、州としての法律は不在でも、自治体レベルで酒類の販売を禁止していたところがあったので、州の法律を整備したということなのかな?よくわかりませんが。

いずれにせよ1920年代初めには多くの州で禁酒法は解消されました。

連邦政府の管轄と州政府の管轄とが入り組んでいて色々と面倒臭い法律だったようですね。

 

そして1921年にはSAQの前身、Commision des liqueurs de Quebecが成立し、アルコール製造と販売をコントロールしたと(結局コントロールしてるんですけれど。)

 

現在もSAQのポスターとか小冊子とかを見ると、ワインが一押しなんですけれど、当時のアルコール消費で一番だったのはラムだったようで、ワインやビールなど度数が低いものの方が飲酒を要因とする社会問題に繋がりにくいと判断されたようで、家で飲むならワインを!という販促方針だったようです。

 

 

ブートレガーとブラックマーケット

 

一方アメリカではカナダの多くの州で禁酒法がしりすぼみになりつつあった1920年に禁酒法が成立し、1933年まで続きました。

しかもこちらは憲法に修正条項を追加して全国的にアルコール飲料の製造、輸入、輸送、販売を禁止するという厳しさ。

 

カナダでの禁酒法は「酒類の販売を禁止する」だけで、製造と輸出は合法でしたから、アメリカは良い市場だったと思うのですが、禁酒法時代に突入したアメリカでブラックマーケットが発達するのに伴いちょうど良い供給元になったはず。

 

製造した酒類を法を掻い潜って国境の南に密輸して儲けるマフィアが国境の北でも南でも活躍しました。

現在でも国境近くの湖のあたりなどに「密輸人の洞穴」みたいな地名が残っているところがあります。

 

アメリカ、カナダ、カリブ諸島などの間でのアルコール類のブラックマーケットや違法販売の歴史はこれ以前からあったようで、これだけでも面白い。

要するに違法にしたり課税がすぎるとブラックマーケットが活発になり犯罪が増える、ということですよね。

 

en.wikipedia.org

 

en.wikipedia.org

 

 
アルコールあれこれ、日本との違い

日本も最近は法律が変わっているでしょうか。

昔は自動販売機での酒類販売も時間無制限でしたけど、今は夜11時までですもんね。

 

ケベック州の場合、アルコール類の販売は自販機(なんか見たことありませんが)であれデパナであれ24時間営業のスーパーであれ、夜11時にはシャッターが降ります。

11時3分くらいに店に滑り込んで「お願い!3分くらい良いでしょ!」とか言っても絶対だめです。

違反して販売したのがバレたら種類販売免許を取り消されて商売上がったりですから、お客さんがビール1ケースやウィスキー1本買って落としてくれる小銭程度のためにそんな危険は冒せません。

 

運転手じゃなくても車の中でアルコールを開封するのはダメ、公共の場(通りや公園など)での飲酒もダメです。

が、ケベック州の場合はピクニックしていてそのお供にお酒を嗜んでるのは問題にならないので、野外でお酒を飲みたいならば何か食べ物を一緒に広げていれば良い、という、これは法律なのかなんなのか、そういう習慣があります。

 

アルバータ州、マニトバ州、ケベック州では飲酒は18歳から合法です。

残りの州では19歳。

日本でもそうですけれど、この年齢以下でも家族内で親が目を瞑っていればあり、とか、友達同士で、、とか、そういうのはあります。

 

アルコールを提供する店の店員がお客の年齢を確認することはよくあることですが、若く見られがちな日本人、30歳過ぎていても「ID見せてくれないなら売れません」と言われることも普通にあり得ますので買い出しの際には必ず写真付きIDご持参あれ。

 

この人酔っ払ってる、と判断されたお客がバーや店の店員にアルコール販売を拒否されることも普通にあります。

明らかに酔っ払ってる人にアルコールを販売した結果交通事故などが発生した場合に、アルコールを提供した店の店員にも責任が問われる可能性があるので。

 

 


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